先日、リアルライフサイエンスは「【ミニセミナー&懇親会】未来のMSLに必要な経験・スキルとは?」と題したイベントを開催いたしました。すでにMSLとしてご活躍されておりさらなるキャリアアップをお考えの方や、サイエンスのバックグラウンドを活かして新たな職種へのチャレンジをお考えの方、日本におけるMSL関連の研修や教育の機会にご興味をお持ちの方など、多くの方にご参加いただき非常に有意義な時間となりました。
イベント前半では、弊社の製薬・バイオチームにてマネージャーを務める飯田 淳輔が、「MSLに必要な経験・スキルとは?」をテーマにお話をいたしました。当日ご参加いただけなかった方に向けて、LinkedInのJapan MSL Group上で資料を公開しております。今後開催予定のイベント(オンライン・オフライン双方)に関する情報やMSL関連のコンテンツなども今後こちらのグループで発信予定ですので、ぜひご参加くださいませ。
以下ではセミナーの概要をまとめております。MSLとは実際にどのような仕事か、また職務内容ややりがいなどにつては前回イベントのレポート内でまとめております。以下の記事もあわせてご覧くださいませ。
MSLとはどのような仕事?未経験からMSLとしてのキャリアを築くには
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MSLとは?
MSL(Medical Science Liaison /メディカルサイエンスリエゾン) は学会や論文、また医療現場からのインサイトを基に最新の医学的・科学的な情報収集と精査を行い、KOL(Key Opinion Leader、医療業界で高い影響力を持つ医師や専門家)への情報提供や情報共有を通じて新たな治療法や最適な治療を普及させる役割を担う職種です。多くの企業においてMedical Affairs(メディカルアフェアーズ)部門に所属しており、自社の製品の販促活動を担当する部署である営業(MRなど)やマーケティングからは独立した存在として位置づけられています。
日本におけるMSLの数や現状
医薬品の安全性に対して規制の高まりが見られる国際的な流れを受け、日本では2010年代からMSLという職種を設け、採用を始める企業が出てきました。現在は100人以上のMSLを抱える企業も多数あり、2022年だけで10名以上のMSL採用を計画している企業も見られます。
日本におけるメディカル・サイエンス・リエゾンの実態に関するアンケート調査 2019によると、2019年時点で日本全国に732名のMSLがいると報告されており、採用の増加傾向を考慮すると2022年時点では1,000名以上に増えていることが予測されます。
MSLが持つ医療系の専門資格の中では薬剤師が265名と圧倒的に多く、医師5名、獣医4名、看護師を含むその他の医療系資格が18名となっています。また中途採用でMSLになった方々の直前の所属部門としては、Medical AffairとR&Dが多くを占めていますが、営業やマーケティングのバックグラウンドからMSLになられた方も少なからず見られます。
MSLの職務の中心を占める“KOLのマネジメント”に関しては、MSL1人あたり担当するKOLの数は平均で21名(内資で16名、外資で25名)となっており、担当する治療領域(Therapeutic Area)はについては1社と回答した企業が最も多かった様子が見られます。
MSLの給与相場については以下の給与水準ガイドで企業規模やタイプ別に分けて細かくご紹介しております。
給与水準ガイド
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今日のMSLに求められるスキルとは?
前回のイベントレポートでは、未経験からMSLとしてのキャリアを考えた時に必要なスキルとして以下の2つを紹介しました。
- 論文などから適切に情報を読み取る情報収集能力
- KOLとの関係を構築し、ニーズを把握するためのコミュニケーション能力
加えて、先述の調査結果から、多くの企業がMSLに求めるスキルや知識として以下をトップ項目として挙げています。
ハードスキル・知識
- 臨床医学の知識
- 製品知識
- 疾患知識
- 規制レギュレーションに関する知識
- 臨床研究のデザイン
ソフトスキル
- 対人スキル
- コミュニケーションスキル
- プレゼンテーションスキル
- リーダーシップおよびマネジメント能力
- 語学(英語)スキル
また、日々多くの企業様とMSLの採用ニーズについてお話している当社のコンサルタントの実感としては、現在MSLに求められるスキルや要件として以下のような項目が挙げられます。
- 原則2年以上の社会人経験が求められるが、新卒でMSLを採用する企業も見られる(その場合は修士以上の学位が必要)
- PhDは必須要件ではないものの、保有者が優遇される(企業やKOLからの信頼という点で大きなアドバンテージとなる)
- 領域経験は必須要件ではない場合が大半。ただ、オンコロジー領域のみ必須である場合が多い
- 英語力は読み書きができれば問題ない場合がほとんどであり、採用プロセスで英語面接があるのも一部のバイオテック企業のみ。TOEICのスコアとしては最低でも650~750点くらいが理想。
- その他はコミュニケーション能力などのソフトスキルが重要となる(対外的な会議や面談を行う機会の少ないオフィスMAとMSLとの採用要件の違いはこの部分となることも)
未来のMSLに求められるスキルとは?
上述したスキルは今後も変わらずMSLに求められる一方で、MSLの人数の増加や認知度の高まりを受けて今後どのような役割が期待されていくのでしょうか?セミナーでは主に3つの点についてご紹介しました。
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転職市場においてPhD保持者へのこだわりが高まる
日本よりも先にMSLという職種が生まれたアメリカの様子を見てみると、保有資格としては1位の薬剤師(全体の38%)と僅差で、2位がPhD(37%)となっています。日本ではMSLの求人でもPhDがあくまで「持っていると好ましい資格・学位」として言及されていることが多いのに比べて、アメリカではすでにPhDをMSLの必須要件としている企業も多く、このトレンドが日本でも普及していくことが予想されます。
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戦略的思考
Medical Affairs部門内で社外とのやり取りの窓口となるMSLへの期待は高く、メディカル戦略の策定においてもMSLに果たす役割が不可欠となります。シニアなMSLポジションやバイオベンチャーににおいては、求人票でも「メディカル戦略の策定」が職務の大きな部分として明記されるケースも増えており、今後この傾向がますます高まっていくことが予測されます。
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デジタルスキル
医療データの質、量ともに比較的な拡大が見込まれる時代、MSLにもサイエンスデータに基づいて業務を進めることが求められます。大手コンサルティング会社PwCが行った調査ではMA部門のデジタルケイパビリティ向上への投資に意欲的な企業も少なくなく、今後MSLにもデータ活用やデジタルスキルの向上が不可欠となっていくことが予想されます。
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サイエンスのバックグラウンドを活かしたキャリアやMSLとしてのキャリアに興味があり、様々な情報を入手したいけれどまだまだ手に入る情報が少ないとお考えの方がいらっしゃいましたら、今後定期的に開催予定のイベントにぜひご参加くださいませ。以下のフォームよりご登録いただきますと、今後開催するイベントについていち早くお知らせいたします。また、ご登録のお礼として2022年度版最新の給与・採用動向調査をお送りいたします。
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